老化抑制で120歳まで生きる「バイオハッキング」✉️108✉️
彼らは毎日数十種類から百種類近いサプリメントを摂取し、血液検査や遺伝子解析、睡眠データの収集を徹底的に行います。さらに、一部の人々は未承認薬や適応外使用の医薬品にも手を伸ばし、その結果をポッドキャストやSNSなどで発信しています。このような「自己実験」は、いまや一部のテック業界の富裕層の間で共通の話題となっています。
2025年9月には、ロシアのプーチン大統領と中国の習近平国家主席の間でも、健康寿命の延伸や先端的な健康管理技術への関心が話題になったと報じられ、大きな注目を集めました。
こうした動きは一見すると最先端の科学実験のように見えます。しかし、その実態を詳しく見ていくと、そこには科学と自己流の境界線が曖昧になった危うい世界が存在しています。

ブライアン・ジョンソン
その象徴的な人物が、Netflixの「Don’t Die」などでも知られる起業家のブライアン・ジョンソンです。
ジョンソンは自身のモバイル決済企業を約8億ドルで売却した後、その莫大な資産を若返りプロジェクト「Blueprint」に投じました。彼の生活は徹底的に管理されており、睡眠、運動、食事、ホルモン状態、血液データのすべてが定量化されています。
彼が特に注目を集めたのが、免疫抑制剤ラパマイシンの自己投与でした。ラパマイシンは本来、臓器移植後の拒絶反応を抑えるために用いられる薬です。しかし動物実験では寿命延長効果が繰り返し報告されており、老化研究者の間でも大きな関心を集めてきました。
ジョンソンは寿命延長を期待して投与を続けていましたが、2024年には状況が変わります。皮膚感染症の増加、血糖値の悪化、脂質異常、安静時心拍数の上昇といった副作用が目立つようになり、最終的にはメリットがデメリットを上回らないと判断して使用を中止しました。
この出来事は、シリコンバレー流バイオハックの本質を象徴しています。理論上は魅力的に見える介入であっても、ヒトの身体は予測通りには反応しないのです。
ジョンソンはさらに、自身の息子から提供された若い血漿を輸血する「若い血液療法」も試みました。若い個体の血液が老化した個体に若返り効果をもたらすという動物実験の結果が背景にあります。しかし米国食品医薬品局(FDA)は、この治療法について十分な科学的根拠が存在しないとして繰り返し警告を発しています。
ピーター・ティール
「シリコンバレーのドン」「ペイパル・マフィアのドン」などという異名を持つ著名な投資家であり、パランティアの共同創業者兼会長ピーター・ティールは、120歳まで生きることを目標としていることで知られています。
彼はヒト成長ホルモン(HGH)の利用について公然と語ってきました。しかし成長ホルモンについては、健康な成人に対する若返り効果を示す信頼できる証拠は乏しく、むしろ糖尿病や心血管疾患などのリスクが懸念されています。
脳機能改善と生産性向上
また、認知機能向上を目的としてメチレンブルーを利用する人々もいます。本来は染料や特定の血液疾患治療に使われる物質ですが、脳機能改善への期待からバイオハッカーの間で人気を集めています。
さらに、集中力や生産性向上を狙ってニコチンポーチを利用する動きもあります。喫煙による害を避けながら覚醒効果を得られると考えられていますが、依存性という大きな問題を抱えています。
テクノロジー業界では「自分自身を最適化する」という考え方が強く支持されています。しかし人体はソフトウェアではありません。アップデートを繰り返せば必ず性能が向上するわけではないのです。
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