新型コロナ「セミ(蝉)型」は科学用語ではない——Cicada変異株の正体✉️90✉️

新型コロナウイルス「セミ(蝉)型」が日本で見つかったという報道がなされました。今回は、この変異株について深堀りします。
山形方人 2026.04.20
読者限定

「セミ型変異株」という奇妙な言葉を耳にして、不安を感じた方も多いかもしれません。しかし、まず押さえておくべき重要な点があります。それは、この名称があくまでニックネームであり、科学的・公式な分類に基づいたものではないということです。

いわゆる“Cicada variant”とは、新型コロナウイルスのオミクロン系統に属する亜系統、すなわちBA.3.2を指す俗称(ニックネーム)にすぎません。国際的な保健機関である世界保健機関や、アメリカ疾病予防管理センターがこの名称を採用しているわけではなく、主にSNSや掲示板などを通じて広まったソーシャルネームです。

今回は、このBA.3.2について、WHOなどの情報をまとめてみます。

まず、なぜ「セミ(Cicada)」という俗称がついたのか。この比喩は、ウイルスの振る舞いに由来します。長期間目立たない状態で存在しながら、あるタイミングで急速に感染が広がる様子が、地中で長く潜伏した後に一斉に地上へ現れるセミの生態になぞらえられたのです。これは科学的な特徴を厳密に表した命名ではなく、人々の理解を助けるためのイメージ的なラベルだと言えます。

南アフリカから世界へ——静かに広がる存在感

BA.3.2が最初に検出されたのは、2024年11月の南アフリカでした。当初はほとんど注目されないレベルの存在でしたが、その後の監視の中で徐々に検出例が増加していきます。

2026年春の時点では、すでに20カ国以上で確認されており、その分布は北米、ヨーロッパ、アジア、オセアニアに広がっています。この拡散速度は決して爆発的とは言えないものの、確実に国際的な広がりを見せており、各国の保健当局が注視している状況です。

ここで重要なのは、「目立たずに広がる」という点です。デルタ株のように急激な感染爆発を引き起こすタイプではない一方で、検出されにくいまま地域社会に浸透していく可能性がある。これがセミ的と表現されるゆえんでもあります。

この記事は無料で続きを読めます

続きは、1811文字あります。

すでに登録された方はこちら

読者限定
空中に漂う遺伝子情報を捉える:環境DNA(eDNA)は監視カメラを超え...
誰でも
「人工太陽」が現実になる日のバイオ:核融合エネルギーをどうする?✉️8...
読者限定
「なでる」だけでヒヨコは幸せを感じるか?✉️87✉️
読者限定
フォトバイオモジュレーション:赤い光療法は科学的か?✉️86✉️
読者限定
金のなる木とバイオマイニング✉️85✉️
読者限定
オジギソウは「数」を数えることができる?✉️84✉️
読者限定
ドパミン神話の終焉—脳科学が直面する「快楽物質」の真実✉️83✉️
読者限定
マイナス55度でも死なない「凍結の覇者」:キタサンショウウオが書き換え...