「老化」はサプリでハックできるか?DNAが語るマルチビタミンの真価✉️81✉️
ハーバード大学の研究チームが、3月9日にNature Medicineに発表した最新の知見は、サプリメント業界のみならず、アンチエイジングに対する私たちの常識に一石を投じるものです。
今回の研究のポイントは、単に「病気が減ったか」という従来のものさしではなく、私たちの細胞内に刻まれた「生物学的な時計」を直接観測した点にあります。結論から言えば、マルチビタミンの継続的な摂取は、私たちのDNAレベルでの老化スピードを、わずかながら、しかし確実に「減速」させる可能性が示唆されたのです。

「実年齢」と「生物学的年齢」の乖離を測る
私たちがカレンダーで数える年齢(暦年齢)と、体の細胞が刻む年齢(生物学的年齢)は、必ずしも一致しません。暴飲暴食やストレス、睡眠不足に晒されている人の細胞は実年齢より老け込み、逆に徹底した自己管理を行っている人の細胞は若々しさを保ちます。
この「細胞の若さ」を精密に測定する指標として、近年注目を集めているのが「エピジェネティッククロック(DNAメチル化時計)」です。DNAの配列そのものは一生変わりませんが、その表面には「メチル基」という小さなタグが付着し、遺伝子のスイッチをオン・オフしています。この付着パターンは加齢とともに変化するため、これを解析することで、その人が生物学的にどれくらい老いているかを数年、あるいは数ヶ月単位の精度で算出できるようになったのです。
今回の研究では、大規模臨床試験「COSMOS」の一環として、958人の男女を対象に2年間にわたる追跡調査が行われました。使用されたのは、市販されているごく一般的なマルチビタミン「Centrum Silver」と、抗酸化作用で知られる「カカオフラバノール」のサプリメントです。
これまでの栄養学的な議論では、マルチビタミンは「食事で足りている人には不要」「高価な尿を作るだけ」と揶揄されることも少なくありませんでした。しかし、本研究が用いた5種類のエピジェネティッククロック(PCHannum、PCHorvath、PCPhenoAge、PCGrimAge、DunedinPACE)による解析は、目に見える症状が現れる前の、より深いレベルでの変化を浮き彫りにしました。