服を「育てる」時代へ――合成生物学が変える未来のファッション✉️96✉️
合成生物学とは、DNAや細胞の仕組みを利用して、生き物に新しい働きをさせる技術のことです。医療や農業だけでなく、実はファッション業界にも大きな影響を与え始めています。
アマゾンの創業者ジェフ・ベゾスが設立したベゾス・アース財団が、環境に優しい新しい素材を開発する研究に約3400万ドルを支援するという発表をしました。これは単なる環境保護の話ではありません。「服とは何か」を変える挑戦でもあるのです。

ファッション産業が抱える大きな問題
ファッションは、自分らしさを表現できる楽しい文化です。しかしその一方で、環境への負担が大きい産業でもあります。
たとえば、コットンのTシャツ1枚を作るためには大量の水が必要です。また、ポリエステルなどの化学繊維は、洗濯するたびに小さなプラスチックごみを海へ流してしまいます。さらに、服を染める工程では、多くの化学薬品が使われています。
これまでは、「服をあまり買わない」「リサイクルする」といった方法で問題を減らそうとしてきました。しかし、合成生物学はもっと根本的な解決を目指しています。
それは、「最初から環境に優しい服を作る」という発想です。
微生物が未来の素材を作る
その主役になるのが、バクテリアや酵母などの微生物です。
たとえば、コロンビア大学の研究チームは、農業廃棄物をバクテリアに分解させ、新しい繊維へ変える研究を進めています。
野菜の皮や茎など、本来なら捨てられるはずだったものが、微生物の働きによって柔らかい布へ変わるのです。これは、従来の工場生産というより、「発酵」に近い仕組みです。
さらに、カリフォルニア大学バークレー校では、「人工クモ糸」の研究も進んでいます。
クモの糸は、とても軽いのに強度が高いことで知られています。しかし、本物のクモから大量に糸を取るのは難しいため、研究者たちはDNAの情報を利用して、微生物にクモ糸の材料を作らせようとしているのです。
もし実用化が進めば、軽くて丈夫な服やバッグが作れるかもしれません。
