ヘルシーなはずの「代替甘味料」が、あなたの肝臓を蝕む恐れ✉️46✉️

リンゴなどの果実にも多く含まれている天然の糖アルコール「ソルビトール」。甘味料などの食品添加物、医薬、化粧品原料などとしても広く使われています。腸内細菌のバランスが崩れたとき、ソルビトールは第2の果糖となる可能性が話題になっています。
山形方人 2025.12.01
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近年、「脂肪肝」の脅威が静かに、しかし確実に私たちを蝕んでいます。世界中の成人人口の実に30%が罹患しているとされる代謝機能関連脂肪性肝疾患(MASLD、metabolic dysfunction–associated steatotic liver disease)は、現代の食生活と密接に結びついています。これまで、その主要な原因として注目されてきたのは、過剰な果糖(フルクトース)の摂取でした。果糖は肝臓で集中的に代謝され、脂肪の蓄積を促進することが知られています。

ところが、この常識を揺るがす新たな研究結果が、米セントルイス・ワシントン大学のチームから発表され、10月28日付けでScience Signaling誌に掲載されました。それは、カロリーオフの食品や食感の改良などに広く使われている「ソルビトール」という代替甘味料、あるいは糖アルコールが、驚くべきことに肝臓内で果糖とほぼ同じような悪影響をもたらす可能性があるというものです。

ソルビトール(ソルビット)は、天然にはプラムやリンゴなどの核果に多く含まれ、その低カロリー性から、長らく「精製糖(グルコース)の安全な代替品」として利用されてきました。国際的にも安全性が認められている食品添加物で、日本ではおにぎり、冷凍食品、漬け物、味噌、醤油、煮豆、佃煮、クッキーやケーキ、ジャム、ジュース、ハム・ソーセージなど、いろいろなものに使われています。おにぎりや冷凍食品などに使われるのは、ソルビットが保湿性に優れているためで、食品の乾燥を防ぐことが目的です。

腸内細菌が担う「ソルビトール防御壁」の崩壊

この研究では、ソルビトールが私たち自身の体内で、そして意図せず「肝臓に向かうフルクトース誘導体」へと変換するメカニズムに、腸内細菌が決定的な役割を果たしているという点です。

ゼブラフィッシュを用いた実験で明らかにしたのは、健康な生体におけるソルビトールの処理ルートが、私たちの食習慣と腸内環境の二重のチェックによって守られているという構造でした。

通常の食事で摂取されたグルコース(ブドウ糖)は、腸内で宿主の細胞によってソルビトールへと変換されます。この酵素はグルコースに対する親和性が低いため、通常は糖尿病などの高血糖状態でのみ問題視されてきましたが、今回の研究は、健康な個体であっても食事後の腸内では、ソルビトールを生成するのに十分なグルコース濃度になることを示しました。

ここで、私たちの腸内細菌が、まさに「防御壁」として機能します。

コントロール群のゼブラフィッシュでは、ソルビトールは腸内細菌によって分解され、無害な代謝副産物として処理されていました。研究では、特にソルビトール分解能を持つAeromonas属の細菌がこの防御の主役であることが示唆されています。

ところが、抗生物質などで腸内細菌叢を除去したゼブラフィッシュ、すなわち腸内環境のバランスが崩れた個体では、このソルビトール分解プロセスが完全に停止してしまいました。その結果、分解されずに残ったソルビトールが腸管から吸収され、肝臓へと運ばれてしまったのです。

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続きは、1175文字あります。
  • 肝臓に侵入したソルビトールの「悪魔の変換」
  • 「フリーランチ」は存在しない:代替甘味料の新たなリスク

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